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高血圧症

日本人の高血圧の最大の原因は、食塩の過剰摂取と言われています。若年・中年の男性では、肥満が原因の高血圧も増えています。喫煙、飲酒、運動不足も高血圧の原因です。

日本の高血圧患者は、全体として約4,300万人いると推定されており、日本人のおよそ3人に1人が高血圧と言われています。

日本人に高血圧症が多い背景には、醤油・味噌を日常的に調味料に使用する食文化が根付いていることが影響しています。平成26年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査報告」によると、40〜70歳の高血圧有病率(140/90mmHg以上または降圧薬服用中)は、男性で60%、女性では40%を占めていました。75歳以上では、男性の74%、女性の70%が高血圧症と診断され、男女とも同程度の割合で高血圧症であることが判明しました。

年齢とともに高血圧患者の割合は増加しますが、特に男性では30代でも5人に1人、40代では3人に1人が高血圧であり、中壮年期においても有病率が高くなっています。また、女性でも50代から高血圧患者が増え始め、60代以降では50%を超えています。

高血圧の診断と分類

日本高血圧学会の高血圧診断基準は診察室での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。また自宅で測る家庭血圧の場合は、収縮期血圧(最大血圧)が135mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が85mmHg以上の診察室よりも低い基準が用いられます。

高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧とがあります。二次性高血圧は、甲状腺や副腎などの病気があり、それが原因で高血圧を起こすものをいいます。睡眠時無呼吸症候群でも二次性高血圧を合併します。それに対し、日本人の大部分の高血圧は、それらの原因のない、本態性高血圧です。本態性高血圧は、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや、遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられています。なかでも、日本人にとって重要なのは、食塩の過剰摂取です。

メタボリックシンドロームは、腹部肥満、血圧高値、血糖高値、脂質異常のうち、複数の要因が重なって動脈硬化を進行させるため、高血圧診断基準では高血圧や高値血圧に当てはまらなくても、他の要因がある場合には注意が必要です。また、肥満がなくメタボリックシンドロームの基準に当てはまらない場合でも、高血圧単独でも多くの病気を引き起こします。高血圧が進んで動脈硬化になると、心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全など、また脳では、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害(脳卒中)や認知症になりやすくなります。

上の血圧と下の血圧

血液は、心臓が収縮したり、拡張したりすることで全身に送り出されていますが、このとき血液が血管の壁を押す圧力を血圧といいます。

上の血圧=収縮期血圧(最高血圧)

「上の血圧」とは心臓がポンプの働きをして、血液を全身に送り出しているときの血圧で「収縮期血圧」または「最高血圧」とも呼ばれます。
送り出された血液は、心臓に直結した動脈に一気に流れ込むため、血管には最も強い圧力がかかり、血圧は最大の数値を示します。

下の血圧=拡張期血圧(最低血圧)

「下の血圧」とは、心臓が血液を送り出した後に、全身から戻ってきた血液をためて膨らんでいるときの血圧のことをいいます。

拡張期には血管にかかる圧力は最も低く、血圧は最小の値となります。

[1]特定非営利活動法人 日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』

上の血圧と下の血圧の差:脈圧

脈圧とは収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)の差をいいます。

脈圧は大動脈の動脈硬化をチェックするときの重要なバロメーターとされているものです。
脈圧はいつも一定というわけではなく、年齢によっても変わってきます。
一般に血圧は年齢とともに高くなりますが、このとき収縮期血圧も拡張期血圧も同じように上がっていけば二つの血圧は平行線を描くはずですが、実際は違っています。
50代くらいまでは上と下の血圧はほぼ平行線を描いて上昇しますが、還暦を過ぎる頃になると、下の血圧だけが緩やかに下がっていく傾向が見られます。
つまり、脈圧(=血圧の上下差)は、60歳くらいから徐々に大きくなるのが一般的な傾向というわけです。
「下の血圧が低い」ということは、大動脈が柔軟性を失って復元力が作用せず、残り4割の血液を送り出す力が落ちていることを意味します。
つまり、大動脈の動脈硬化が進んでいる証となるのです。

脈圧(上下の血圧の差)が大きいということも、大動脈の動脈硬化が進行し、血管の弾力性や伸縮性が落ちて、うまく膨らんだり縮んだりできなくなっている証拠です。
なので、上下の血圧の数値だけでなく、その差である「脈圧」を確認することも大切なのです。
脈圧は大動脈の動脈硬化の程度を反映することが分かったところで、あなたご自身の脈圧を測定してみませんか。

上腕での血圧の左右差

血圧には左右差はほとんどありませんが、人によっては右上腕の血圧の方が、左上腕の血圧よりもわずかに高いこともあります。
これは、大動脈から鎖骨下動脈に続く血管が左側より右側に早く分岐することによると考えられています。

しかし、血圧の左右差が10~20mmHg以上あるのは異常であり、何らかの病気が潜んでいる可能性もあります。
動脈に詰まりがある場合は、詰まっている前で測定すると血圧は高くなり、反対に詰まっている先で測定すると低くなります。
例えば右側の血管に詰まりがある場合、毎日右側で測定していると本来の血圧の値よりも低く出てしまうため、高血圧の治療が遅れる可能性があります。
高血圧が進行すると脳血管疾患や循環器病などの病気となって突然死のリスクが高まります。
右利きの人は左上腕部で測定することが一般的ですが、時々は左右の腕で血圧の左右差が無いか確認してみましょう。

測定する時間は、毎日朝・夜の決まった時間にしましょう。
朝は起床後1時間以内、トイレを済ませ食事や薬を飲む前に測定します。夜は就寝前に測定しましょう。測定は2回行い、平均値を手帳に記録します。

血圧を測定する際は、座って安静にした状態で行います。腕帯は直接、または肌着の上から巻きましょう。
上着の袖をたくし上げてしまうと血管が圧迫され正しい値で測定できないことがあるためです。
腕帯は肘にかからないようにし、心臓と同じ高さで計ります。測定中は身体や腕を動かさないようにしましょう。

測定した血圧は血圧手帳などに記録し、受診時に医師に提出しましょう。血圧手帳とは、測定した血圧を記録するためのツールです。
自分で書き込む手帳の他にもスマホのアプリを使って記録する方法もあります。
血圧手帳に毎日の血圧を記録しておくことで、普段の血圧を医師がひと目で確認できるため、治療内容の決定や変更に役立ちます。

高血圧症のタイプ

持続性高血圧

いかなる場所(医療機関や自宅)血圧を測っても、いつも基準値よりも高くなっているタイプ。

白衣高血圧

医療機関では緊張して血圧が高く、自宅で測ると正常な血圧に戻るタイプ。医師や看護師の着衣が白衣であることが多いことより、白衣高血圧と呼ばれます。このタイプは将来的に持続性高血圧に移行することが多いと考えられています。

仮面高血圧

白衣高血圧とは真逆に、仮面高血圧とは医療機関では正常なのに、自宅で測ると基準値より高くなるタイプ。医療機関では仮面をかぶり、高血圧を呈さないためそう呼ばれます。
仮面高血圧は、さらに次の三つのタイプに分かれます。

1. 夜間高血圧

夜間は副交感神経優位となり、睡眠中は血圧が下がることが多いのですが、睡眠中の血圧が基準値を超える高い状態になります。日中の血圧は正常なので油断しがちですが、寝ている間に動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを起こす危険性があります。夜間高血圧を引き起こす原因としては、心不全や腎不全、自律神経の障害、睡眠時無呼吸症候群、不眠などが考えられます。

2. 早朝高血圧

他の時間帯は正常なのに、起床前後に血圧が基準値よりも高くなります。特に、起床とともに血圧が急上昇するタイプは要注意とされています。起床時に血圧が上昇することは、日中活動するための準備なので自然ですが、基準値を超えて急上昇するようなら、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすリスクが高まり、要注意です。早朝高血圧を引き起こす原因としては、動脈硬化、大量の飲酒、睡眠時無呼吸症候群、不眠などが考えられます。

3. ストレス性高血圧

仕事や介護・育児などでストレスを受け、緊張状態が持続するため高い血圧を呈します。オーバーワークの会社員や長い介護を強いられている女性などにもよくみられます。緊張状態が長く、自律神経の乱れなども関与しており、拡張期血圧(下の血圧)のみが高い場合もあります。この状態が続くと、持続性高血圧に移行する危険性があります。

高血圧の予防

高血圧の予防に欠かせないのは、食塩摂取量の制限です。食塩摂取の目標は、「健康日本21(第二次)」の目標値では8g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。また、日本高血圧学会は、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にすることを強く推奨しています。
運動不足や過食で肥満が進行している場合は、適度な運動や食事制限(カロリー制限)も必要であり、適正な体重(BMI 正常値)を目指すことも重要です。
ストレスがかかっている場合は過緊張状態を短縮する工夫を生活に組み込むことも重要です。リラックスする時間や良い睡眠をとれるような生活上の工夫も重要です。眠前の飲酒やコンピューター・スマートフォン・テレビの閲覧なども回避するよう心掛けましょう。生活の改善が高血圧の改善につながることを意識しましょう。

遺伝的要素も高血圧発症に関与しており、ご親族が動脈硬化に関与する疾患(高血圧症・心筋梗塞・脳卒中・解離性大動脈瘤・不整脈・脂質異常症など)に罹患していた場合も高血圧症の発症予防と早期治療に意識しましょう。

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