長引く咳
長引く咳
咳の分類
急性、遷延性、慢性と咳が発症してからの持続期間(週)で分類されています。
- 急性咳嗽 ・・発症して3週間以内の咳 大半はウイルスまたは細菌感染症
- 遷延性咳嗽・・発症後3週間以上8週間未満の持続する咳 大半は感染後咳嗽で咳喘息や副鼻腔炎の可能性あり
- 慢性咳嗽 ・・8週間以上持続する咳 慢性疾患の関与が90%以上 咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症が主な原因
長引く咳の約80%以上は、咳喘息・アトピー咳嗽・胃食道逆流症・副鼻腔気管支症候群の4つの疾患が原因となっており、適切な診断と治療により改善が期待できます。
長引く咳の原因(臓器別)
・鼻
上気道咳症候群・副鼻腔炎(後鼻漏)・アレルギー性鼻炎
・のど
喉頭アレルギー・アトピー咳嗽
咽頭炎(上咽頭炎、慢性咽頭炎)・喉頭炎・声帯炎
・食道
胃食道逆流症(GERD・逆流性食道炎
・気管支
咳喘息・気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患(肺気腫 COPD)・感染後咳嗽
・肺
肺炎(細菌性・ウイルス性など)・慢性閉塞性肺疾患(肺気腫 COPD)・間質性肺炎・肺がん
・肺結核・非結核性抗酸菌症 など
・心臓
心不全
代表的な咳の原因について
咳喘息
原因と主症状
明らかに喘鳴がなく、咳嗽のみを主症状とするも気道過敏性の亢進はみられる喘息の一亜型と言われています。上気道感染後の8週間以上継続する慢性咳嗽をきたし、気管支喘息と同様に就寝時、深夜や早朝に症状が顕在化します。冷気、運動、喫煙気候の変化などが増悪因子になります。
診断と治療
採血や胸部XPでは診断不可であり、気管支拡張剤により咳嗽が緩和することがありますが、吸入ステロイドを使用せざる得ないこともあります。症状を放置すると約30%に気管支喘息に移行することがあり、注意を要します。
アトピー咳嗽(アレルギー咳嗽)
原因と症状
喘鳴や呼吸困難を伴わない乾いた咳が3週間以上続き、気管支拡張剤が無効であるという特徴を有しています。アレルギー症状を引き起こしやすい遺伝的素因の1つとされています。アトピー性喘息やアレルギー性鼻炎など家系に有しており、IgE 抗体を産生しやすい素因があり、主症状である咳嗽は頑固なことが多く、発声時にも咳嗽がでるため日常生活にも支障をきたすこともあります。中年女性に多く発症し、喉の違和感やかゆみなど気管に炎症が生じて咳に対する感受性が亢進しています。
診断と治療
咳は1日中のこともあれば温度差のある場所への移動などでも増悪が見られます。抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬が有効な場合がありますが、吸入ステロイドの使用や経口ステロイド薬の内服が必要になることもあります。
上気道咳症候群(UACS:Upper airway cough syndrome)
原因・主症状
主に後鼻漏(鼻水がのどに流れ落ちること)が原因になって起こるとされている上気道粘膜の知覚神経過敏による咳です。のどの奥に液体が垂れる感覚・イガイガ感・痰が常時張り付いている感覚、鼻汁・鼻閉がみられる場合は診断がなされることが容易ですが、これらがはっきりしないこともあります。
診断・治療
のどの奥が敷石状にみえる所見や鼻水が流れる様子が確認できれば診断の補助となります。痰がらみの咳が夜間や早朝にみとめることが多く、季節性がある場合もあります。治療は原因となる鼻炎・副鼻腔炎の治療になり、抗ヒスタミン薬やステロイド含有の点鼻薬の適切な投与が中心となります。吸入ステロイド(+長時間作用性β2刺激薬)が必要な場合もあります。難治性の咳喘息にはアレルギー性鼻炎によるこの疾患が紛れ込んでいることもあります。
副鼻腔気管支症候群(SBS:Sinobronchial syndrome)
原因・主症状
副鼻腔炎+気管支炎(気管支拡張症・慢性気管支炎・びまん性汎細気管支炎)です。上気道咳症候群(UACS)とは咳の発生原因が上気道由来か下気道由来なのかの違いとなり、下気道由来(下気道粘膜の知覚神経過敏が原因)の咳が主病態となります。
診断・治療
呼吸困難を伴わない8週間以上の湿性咳嗽が継続し、同時に副鼻腔炎を示唆する自覚症状や画像所見を認める場合、本疾患が疑われます。胸部・副鼻腔 X線検査やCT検査の所見も診断の参考となります。家族内発生率が高いのも特徴です。治療としては去痰剤の投与、ステロイド含有の点鼻薬やマクロライド系抗菌薬の長期少量投与を考慮します。気道過敏性が亢進している場合は吸入ステロイド(+長時間作用性β2刺激薬)が必要な場合もあります。また副鼻腔炎に対する手術も必要なケースもあります。
胃食道逆流症(GERD)による咳嗽(食後咳嗽)
胃食道逆流症(GERD:Gastro Esophageal Reflux Disease )は胃内容物の食道へ逆流しておこる病気の総称であり、逆流性食道炎の合併、あるいは胸やけを中心とした逆流症状が生じることで健康な生活が妨げられているものと定義されます。GERDは欧米に多い疾患でしたが、近年日本でも急速に増加しており、良性疾患とはいうものの生活の質(QOL)に大きく影響することから積極的に治療すべき疾患となっています。胃食道逆流症(GERD)の食道外症候群には,呼吸器疾患(症状)として嗽と喘息が指摘されており,GERDの呼吸器への関わりは大きいとされています。長引く咳の原因として欧米ではGERDが約1/3を占めると言われており、日本でも最近ではGERDによる長引く咳の患者さんが増えています。また、咳が出ることでGERDが悪化し、さらに咳が悪化するという悪循環(Cough-Reflux Self Perpetuating Positive Feedback Cycle)」という概念も提唱されています。
診断・治療
代表的な症状として1)胸やけ 2)食事中や食事中の咳嗽やむせこみ 3)喉のひりひり感・不快感 4)夜間・朝方の咳などがあげられます。治療は胃液の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が主体となります。胃液の分泌を促進させる食事(脂っこい食事や酸っぱいもの)の回避、就寝前2時間前の食事の回避、暴飲暴食をしないなどの食生活の見直しや食後にすぐ臥位にならない、禁煙をする、大量飲酒をしない、規則正しく生活する(睡眠の確保)ことにも気を配る必要があります。
心因性咳嗽
「心理的要因により発作性あるいは持.続的に続く乾性咳嗽」と定義されます。精神的ストレスと咽頭違和感への執着が乾性咳嗽(乾いた咳)を引き起こすとされています。長期間継続する咳嗽であり、ストレスがかかると症状の増悪がみられます。
診断と治療
睡眠中や何かに集中しているときに症状が見られていないこと、現在ストレスがかかっているかなどの社会的状況(人間関係や職場、介護など)の詳細な問診などから診断可能な場合があります。年齢によっては気道腫瘍や喉頭腫瘍などの器質的疾患の除外診断は必要に応じて必要になります。治療はストレス回避のための生活指導やメンタルヘルス受診、半夏厚朴湯などの漢方薬や安定剤投与などが症状の緩和につながることがあります。
