禁煙外来
COPDなどは喫煙が原因となる代表的な疾患であり、症状のコントロールのためには禁煙は必須となります。喫煙は肺がん、喉頭がんなどのがんの発症や間質性肺炎への増悪因子となり平均寿命の短縮に影響しています。また、妊娠女性においては低体重児 (2,500g未満) の出産、早産、 妊娠中の異常(破水、 胎盤早期剥離、 前置胎盤など)、 乳幼児突然死症候群(SIDS) のリスクが確実に高くなります。受動喫煙に関しても1種の社会問題となっています。喫煙は毎年増加傾向にある医療費の増大に拍車をかけている行為で嗜好百害あって一利なしとも言えます。
喫煙がやめられないのは意志が弱いからではなく、ニコチン依存症という病態が原因と考えられています。ニコチン依存症とはある一定の血中ニコチン濃度になった場合体が喫煙を欲し喫煙を繰り返してしまう疾患です。ニコチン依存症からの離脱は困難であることがほとんどであり、身体的依存と心理的依存を同時に克服しなければなりません。二コチンはシナプス前末端のニコチン受容体に結合して、ドパミン等の神経伝達物質を過剰放出します。ニコチンによって脳内報酬系が活性化されると、多幸感・快感・覚醒効果・緊張緩和等、様々な効用を感じるようになります。
禁煙外来は禁煙補助薬や精神的依存には認知行動療法を行い、禁煙をサポートする外来です。禁煙治療の諸費用 保険診療で3ヵ月間に5回受診する場合、およそ12,000円~15,000円です。
禁煙治療について
治療開始前に喫煙状況やニコチン依存度を問診表にて確認し、呼気中一酸化炭素濃度を検査します。
禁煙治療を受けることのできる方
以下の要件をすべて満たした方のみ、12週間に5回の禁煙治療に健康保険が適用されます。
- ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上、ニコチン依存症と診断された方
- 35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
- 直ちに禁煙することを希望されている方
- 「禁煙治療のための標準手順書」[2]に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方
TDSニコチン依存度テスト
5点以上が「ニコチン依存症」と診断されます。
No | 設問内容 | はい 1点 |
いいえ 0点 |
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問1 | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか? | ||
問2 | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか? | ||
問3 | 禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか? | ||
問4 | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか? (イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) |
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問5 | 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか? | ||
問6 | 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか? | ||
問7 | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? | ||
問8 | タバコのために自分に精神的問題(注)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?注)禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抗うつなどの症状が出現している状態。 | ||
問9 | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか? | ||
問10 | タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか? | ||
合計 |
Kawakami, N. et al. : Addict Behav 24(2) : 155, 1999
保険診療の流れ
健康保険を使った標準禁煙治療は、12週間に5回のプログラムです。
治療にかかる具体的な費用の内訳(3割負担の場合)
初回 | 診察料820円ニコチン依存症管理料690円+薬剤料金約2000円 (2週間処方) |
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2週間後 | 診察料370円ニコチン依存症管理料550円+薬剤料金約2000円 (2週間処方) |
4週間後 | 診察料370円ニコチン依存症管理料550円+薬剤料金約1000~4000円 (4週間処方) |
8週間後 | 診察料370円ニコチン依存症管理料550円+薬剤料金約1000~4000円 (4週間処方) |
12週間後 | 診察料370円ニコチン依存症管理料540円 |
合計 | ニコチンパッチ(商品名:ニコチネルTTS)・・約12000円 禁煙内服薬(商品名:チャンピックス)・・約18000円 |
※薬剤費以外に別途、薬局にて調剤技術料・薬剤情報料などのお支払が毎回必要です。
禁煙治療の内容とながれ
健康保険を使った標準禁煙治療では、以下のような内容の治療を受けることができます。
- ニコチン依存度の判定(問診などによってどれだけニコチンに依存しているか判定します)
- 呼気一酸化炭素濃度測定を行います。呼気一酸化炭素濃度は、3~5時間で約半分になるので、特に当日の喫煙状況を把握することが可能です。
- ニコチン依存度に合わせた処方(状況によって貼り薬や飲み薬を処方します)
- 禁煙に対するアドバイス(禁煙を楽にできるためのノウハウをお伝えしたり、禁煙に対する想いや不安を聴取し精神的サポートを行います。医師または専任の看護師がカウンセリングを行います)