睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)
病態
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に無呼吸または低呼吸の状態が頻回に出現し、低酸素状態になり睡眠が障害されて日中の傾眠を引き起こす特徴があります。頻回の無呼吸はいびきによる閉塞性のSASによることがほとんどであり、いびきの原因は肥満、扁桃肥大、アデノイド、小顎症などが多いとされています。
診断と治療
1)日中の眠気の評価
患者さんの日中の眠気を評価するために,ESS(エプワース眠気尺度)問診票が知られています.24点満点で評価されますが,11点以上で日中の眠気が強いと判断します.
エプワース睡眠尺度(ESS) 問診票
全項目の合計点を算出し、下記の表を参考に程度を評価します。
(Johns MW: A new method for measuring daytime sleepiness; The Epworth sleepiness scale. Sleep 14: 540-545, 1991より引用改変)
2) 携帯用睡眠時無呼吸検査装置(睡眠ポリグラフ検査:PSG polysomnography)により1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数(AHI)を確認し、SASかどうかを診断します。
AHIによるSASの重症度
AHI | 重症度 |
---|---|
5未満 | 正常(SASではない) |
5以上15未満 | 軽症 |
15以上30未満 | 中等症 |
30以上 | 重症 |
PSG検査でAHIが5未満であれば、睡眠時の呼吸状態は正常判断されます。5以上で日中の眠気などの自覚症状がある場合や、自覚症状はなくてもPSG検査でAHI15以上の場合はSASと診断されます。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧、糖尿病、心臓病、脳血管疾患などと密接に関連することが知られています。
とくにAHIが5以上で高血圧のリスクが高くなり、30以上の場合では一般人口と比較して高血圧が約2倍、虚血性心疾患が約3倍、脳血管疾患が3~5倍の頻度で合併すると報告されています。
治療の目的は日中の過度の眠気と集中力の低下による仕事などへの影響、QOL(Quality of life)の低下の改善です。それに加えて将来への心血管障害予防や現時点で合併している心血管疾患の増悪予防を含めた生命予後の改善であります。睡眠時無呼吸症候群のみならず、合併症も含めて治療していく必要があります。中等度から重症の場合は持続陽圧呼吸療法(CPAP:continuous positive airway pressure)が治療の第一選択となります。その保険適用は無呼吸低呼吸の回数(AHI)20以上です。簡易モニターでは呼吸イベント指数が40以上であればCPAP適応とされています。