高尿酸血症・痛風
尿酸とは?
体内の細胞や食品に含まれるプリン体が壊され、肝臓で分解されて、生成される老廃物(体内プリン代謝の最終産物)が尿酸です。プリン体とは、細胞核に存在する核酸の主成分であるアデニンやグアニンなどとして存在しています。食品に含まれるプリン体の代謝物質である尿酸は全体の20%に過ぎず、残りの80%は細胞(遺伝子)の代謝やエネルギー代謝によるものです。通常は、生成された尿酸とほぼ同量の尿酸が尿中(70%)、汗・便(30%)に排泄されます。高尿酸血症を来たす2つのタイプ(プリン体の産生過剰型と排泄低下型)があり、治療法もその各々に対するものがあります。
高尿酸血症は、生活習慣病のひとつで、痛風関節炎・痛風結節・尿路結石・痛風腎の原因となります。高尿酸血症は、生活習慣などの原因が改善されない限り継続する慢性疾患で、日本の成人男性において約25%に見られ、30歳代が最多で、痛風患者の95%以上が男性です。また、メタボリック症候群、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を合併することが多く、徐々に動脈硬化を進行させ、心血管疾患(脳卒中や虚血性心疾患)の危険性が高くなります。肥満男性と更年期以降の女性に多くみられます。
高尿酸血症に伴う病態について
痛風関節炎
尿酸値7.0㎎/dl以上の高尿酸血症が持続すると、尿酸が関節内で尿酸ナトリウムという結晶(尿酸結晶)として沈着します。この結晶が激しい運動、強いストレス、尿酸値の急激な変動などを引き金として、関節内に剥がれおち、痛風発作を来たします。発作はある日突然起こり、風が吹いても痛い”激痛を伴うのが特徴で足の親指の付け根が最も多く、通常は一度に1ヶ所だけです。発作は1~2週間程度で治まりますが、高尿酸血症の治療が適切になされなければ、発作を繰り返します。
尿酸結石
血清尿酸値が高いと尿が酸性になり、尿酸が溶けにくくなり、尿路結石が出来やすくなります。一般に尿路結石は血清尿酸値が高いほど、尿中尿酸排泄量が多いほど、高率に合併する傾向です。高尿酸血症は,尿酸結石形成に関するばかりではなく、尿路結石中最も多いシュウ酸カルシウム結石(全尿路結石中、約80%)形成の危険因子でもあります。尿酸結石は、全尿路結石の約5%を占めています。痛風・高尿酸血症患者の20%以上に結石形成がみられます。日本人が、生涯の尿路結石に罹患する確率は10%(10人に1人)と高率です。
痛風腎
尿酸結晶が腎臓の尿細管に沈着して腎機能を低下させてしまうのが痛風腎で腎不全の原因になりえます。痛風腎の発生機序として、他の生活習慣病が強く関与しています。痛風患者の約30%に痛風腎がみられると云われています。
治療
高尿酸血症の治療には、食事療法・運動療法など生活指導、尿路管理・薬物療法があります。 食事療法としては、プリン体の多い食事、アルコール(特にビール)を控えめにして、痛風発作の原因となる激しい運動(無酸素運動)は控え、ウオーキングや水中歩行等の適度な有酸素運動を行い、肥満を防止することが基本となります。摂取カロリーを抑えて(1日摂取カロリーを標準体重X 25-30kcal)、運動して、体重を減らせば、多くの人で、尿酸値が減少してきます。高尿酸血症では、尿が酸性となりがちです。尿酸は酸性尿には溶けにくく、結晶沈着や尿路結石を来たします。尿の酸性化防止させるために、バランスの良い食事や薬の服用にて、尿酸結晶を溶かしてくれる尿のアルカリ化をめざします。また、尿量を増やし、尿を希釈させるため、1日摂取水分量を2リットル以上が理想とされています。